退去強制および出国命令について

この記事では、外国人が「退去強制」および「出国命令」を命じられる事由とその手続き、およびこれにともなう「在留特別許可」と「仮放免」について解説します。

「退去強制」の事由

  • 次の事由に該当する場合は、規定の手続きにより「退去強制」又は「出国命令」を命じられる可能性があります。
  • 各号の詳細については「出入国管理及び難民認定法」条文等を確認してください。

  (入管法24条 退去強制)

1号 不法入国者
2号 不法上陸者
2号の2 在留資格を取消された者(法22条の4第1項1,2号に限る)
2号の3 在留資格を取消された者(法22条の4第1項5号で逃亡の恐れがある)
2号の4 在留資格を取消された者で、指定された期間を超えて在留する者
3号 偽変造虚偽文書行使等
3号の2 公衆等脅迫目的の犯罪
3号の3 国際約束で入国を防止すべきとされる者
3号の4 不法就労助長行為、教唆、幇助
3号の5 在留カードの偽変造等
4号イ 専従資格外活動者(在留資格該当性のない活動として就労活動を専ら行っていると明らかに認められる者
4号ロ 不法在留者(オーバーステイ)
4号ハ 人身取引等加害者
4号ニ 旅券法違反者
4号ホ 集団密航に係る罪違反者
4号ヘ 非専従資格外活動者
4号ト 少年法違反者
4号チ 規制薬物違反者
4号リ 刑罰法令違反者(無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、執行猶予の言渡しを受けた者を除く)
4号ヌ 売春関係者
4号ル 不法な入国・上陸・在留資格取得の幇助者
4号ヲ 暴力主義的破壊活動者(国家秩序破壊)
4号ワ 暴力主義的破壊活動者(公の秩序破壊)
4号カ 暴力主義的破壊活動者(頒布)
4号ヨ 利益公安条項該当者
4号の2 刑罰法令違反者の特例(一定の犯罪の場合、執行猶予に付されたか関係ない)
4号の3 国際競技会等関連不法行為
4号の4 虚偽届出罪等違反者
5号 仮上陸条件違反者
5号の2 退去命令違反者
6号 特例上陸許可に係る不法残留者
6号の2 船舶観光上陸許可に係る不法残留者
6号の3 数次船舶観光上陸許可取消しに係る出国期間経過
6号の4 数次乗員上陸許可取消しに係る出国期間経過
7号 不法在留者(日本国籍離脱者等)
8号 不法残留者(出国命令にかかる出国期限経過)
9号 出国命令を取消された者
10号 難民認定を取消された者

  (赤字は「出国命令」に該当する可能性がある事由です)

  

手続の流れ

  • 「退去強制」および「出国命令」手続きの流れは下図のようになります。
  • 退去強制手続きは、入国警備官の違反調査で「容疑あり」と判断された場合において、①入国審査官の審査、②特別審理官の口頭審理、③異議の申出に対する法務大臣の採決の3審制により、退去強制令書が発布されると在留資格が確定的に失われます。

(出典:出入国在留管理庁ホームページより)

  

「出国命令」について

  • 出国命令対象者
    以下の全ての要件を満たす場合は、「退去強制」ではなく「出国命令」が命じられます。

  ①入管法24条2号の4、4号ロ又は6号から7号までのいずれかに該当すること。
   このうち、4号ロ(不法在留者(=オーバーステイ))のケースが多数を占めます。
  ②速やかに出国する意思をもって自ら入国管理署に出頭したものであること。
  ③一定の重大な退去強制事由に該当しないこと。
  ④窃盗罪等の一定の罪により懲役又は禁錮に処せられたものでないこと。
  ⑤過去に退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと。
  ⑥速やかに本邦から出国することが確実と見込まれること。

  • 出国命令に該当する場合は、15日を超えない範囲内で出国期限を定め、出国命令書を交付して、日本から出国を命じることになります。この場合は、全件収容主義の例外として、身柄を収容されません。
  • 出国命令を受け、出国期限内に日本から出国した者は出国の日から1年間日本に上陸することはできません。

  

「退去強制」について

  • 入国警備官による違反調査の結果、退去強制事由に該当すると疑う相当の理由があると判断された場合は、出国命令対象者を除き、収容令書により身柄が収容されます。(仮放免された場合を除き、原則30日間以内。最大60日以内)
  • 収容期間中に、入国審査官による違反審査、特別審理官による口頭審査、異議の申出に対する法務大臣の採決を経て、退去強制令書の発布手続が行われます。退去強制令書の発布後は、送還可能のときまで原則、収容されます。
  • 上記手続き期間中に、特段の理由がある場合は、仮放免許可、在留特別許可の申請を行います。これら一連の手続は、弁護士を代理人として交渉することが可能です。
  • 退去強制を命じられ、日本から出国した者は退去した日から5年間(これまで退去強制や出国命令を受けたことがない者)もしくは10年間(再度の退去命令を受けた者)日本に上陸することはできません。

 

「在留特別許可」について

  • 在留特別許可の求めは、「法務大臣に対する異議の申出」において行われます。
  • 在留特別許可が付与されるか否かは法務大臣に広範囲の裁量が認められていますが、入管から[在留特別許可に係るガイドライン]が公表されています。
  • 在留特別許可の可能性がある程度高い類型は下記のものがあります。

  ①永住許可を受けているとき
  ②もと日本国籍で、日本に本籍を有していたもの
  ③日本人、特別永住者、永住者、定住者と婚姻関係が一定期間以上続いているもの
  ④日本人の実子を親権をもって監護養育するもの
  ⑤単純な更新忘れで在留期間経過日数が長期間に渡るものではなく、
   特別受理はされなかったが、出頭申告し在留状況も良好な場合
    (身柄収容は基本的になし)
  ⑥その他法務大臣が特別に認めた場合

  

「仮放免」について

  • 入管法54条2項では、「収容されている者の情状及び仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格、資産等を考慮して、300万円を超えない範囲内で法務省令で定める額の保証金を納付させ、かつ、住居及び行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務その他必要と認める条件を付して、その者を仮放免することができる」と規定されています。しかし、仮放免の要件については定められていません。

  

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