就労ビザの種類と外国人雇用の流れ

企業が外国人を雇用する場合について、職務内容と必要な在留資格、募集から入社までの流れ、雇用中の管理、届出、罰則について解説します。

入管法、労働法など罰則を伴う規制もあるため、社内で対応が難しい場合は、専門家のサポートを受けることをお勧めします。

就労可能ビザと就労範囲

就労できる主な在留資格(ビザ)は下記のとおりです。

在留資格に応じて、就労できる範囲や必要な学歴などの要件が定められています。

外国人を採用する際は、職務内容に適した在留資格をもつ外国人を採用することが重要です。

主な就労系ビザ 

在留資格(ビザ) 職務内容 就労範囲
技術・人文知識・国際業務 技術者、総合職、海外取引、通訳等 いわゆるホワイトカラー的な職務 それぞれの在留資格で認められた範囲内で就労できる
企業内転勤 技術・人文知識・国際業務に該当する職務
高度専門職 技術・人文知識に該当する職務
特定活動46号
(本邦大学卒業者)
技術・人文知識・国際業務に該当する職務+現場業務(日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務)
介護 介護福祉士
技能 外国料理の調理師、スポーツ指導者等
特定技能 特定産業分野の現場業務 いわゆるブルーカラー的な職務
技能実習 技能実習生

身分系ビザ

在留資格(ビザ) 該当者 就労範囲
永住者 永住許可を受けた者 就労制限がなく就労できる
日本人の配偶者等 日本人の配偶者、実子、特別養子
永住者の配偶者等 永住者・特別永住者の配偶者、 日本で出生し引き続き在留している実子
定住者 日系3世、外国人配偶者の連れ子、死別・離婚定住者等

就労の可否は個別に定められるビザ

在留資格(ビザ) 該当者 就労範囲
留学 大学、専門学校、日本語学校等の学生 資格外活動許可を受けた範囲内で就労できる
(週28時間までのアルバイト)
家族滞在 就労系ビザ等で在留する外国人の配偶者、子
特定活動 継続就職活動者、就職内定者、解雇等による求職活動者、難民申請者など 個別の指定書または資格外活動許可を受けた範囲内で就労できる

入社までの流れ

採用計画の作成

職務の内容、必要な能力、雇用条件を決め、その内容に応じて対応する在留資格を検討します。

職務の内容と、個別の在留資格で認められた活動内容に該当性や適合性がない場合は、在留資格申請は不許可となります。このため慎重に検討が必要です。

募集、選考

直接求人募集を行うか、職業紹介事業者からあっせん(紹介)を受けて募集を行います。

無許可・無届の職業紹介事業者(ブローカー等)や、保証金や違約金の徴収に係る契約を結ぶ事業者からあっせんを受けてはいけません。

募集にあたり国籍に条件を付すなど差別的な取り扱いは禁止されています。

採用

採用が決定したら、労働条件通知書または雇用契約書により労働条件を明示しなければなりません。
採用・雇用条件として、適正な在留資格を保持することを条件として記載することをお勧めします。

  

次に、労働条件通知書または雇用契約書を添付して在留資格申請を行います。これには次の2ケースがあります。
  ① 海外にいる外国人を呼び寄せる場合
  ② 国内にいる外国人を雇用する場合

① 海外にいる外国人を呼び寄せる場合

在留資格認定証明書交付申請

受入企業が申請代理人となって在留資格認定証明書交付申請を行います。
交付が決定したら在留資格認定証明書を本人に送付します。

査証(ビザ)発給申請

本人が在留資格認定証明書を添付して、在外日本大使館・領事館で査証(ビザ)発給申請を行います。

入国

空港で査証(ビザ)と在留資格認定証明書等を提示して上陸審査を受けます。

居住地の届出

住所が定まったら市区役所で転入届を提出します。この時は入管への届出はいりません。

入社
外国人雇用状況の届出、雇用保険、社会保険等の各種届出

外国人を雇用した場合に必要な届出は、下記をご覧ください。

  

② 国内にいる外国人を採用する場合

在留資格変更許可申請または就労資格証明書交付申請

留学生が就職する場合や、転職により業務内容が外国人の有する在留資格に係る在留資格該当性の範囲外となる場合は、在留資格変更許可申請が必要となります。

なお「高度専門職1号」「特定活動46号」「特定技能」については所属機関が変わる場合も変更許可申請が必要です。

在留資格該当性の範囲内の転職で、かつ残在留期間が3か月以下の場合、在留期間更新許可申請ができますので、当申請で転職の事実と職務の内容を申告します。

転職時点で残在留期間が3か月を超える場合は、義務ではありませんが就労資格証明書交付申請を行って、在留資格該当性と上陸基準適合性があることを確認することをお勧めします。

上記申請とは別に、外国人本人が前所属機関との契約終了の届出(離脱の届出)及び、新たな契約締結の届出(移籍の届出)を忘れずに行う必要があります。

入社

就労を開始できる時期は、在留資格変更許可が得られた後からとなります。

外国人雇用状況の届出、雇用保険、社会保険等の各種届出

外国人を雇用した場合に必要な届出は、下記をご覧ください。

  

主な届出

本人もしくは所属機関が行わなければならない届出には次のようなものがあります。

実務的には特に外国人が転職した場合に、本人が「所属(契約)機関に関する届出」を忘れずに行うことが重要です。これを怠った場合は在留資格の変更や更新が許可されない場合があります。

届出 時期 届出人⇒届出先 期限
住居地の変更届 ・住居地を変更したとき 本人 ⇒ 市町村 新居住地を定めた日から14日以内
在留カード記載事項の変更届
(居住地以外)
・氏名、生年月日、性別、国籍に変更が生じたとき 本人 ⇒ 入管 変更が生じた日から14日以内
配偶者に関する届出 ・配偶者と離婚、死別したとき
 ※対象「家族滞在」
    「日本人の配偶者」
    「永住者の配偶者」
本人 ⇒ 入管 事由が生じた日から14日以内
所属(契約)機関に関する届出書 契約機関との契約が終了したとき
新たな契約機関と契約したとき
・契約機関の名称が変わったとき
・契約機関の所在地が変わったとき
・契約機関が消滅したとき
本人 ⇒ 入管 事由が生じた日から14日以内
雇用保険被資格者資格取得届又は喪失届
(雇用保険対象者)
・新たに外国人を雇い入れたとき
・外国人が離職したとき
所属機関
ハローワーク
雇い入れ時
⇒翌月10日迄

離職時
⇒10日以内
雇用状況届出書
(雇用保険非対象者)
翌月末迄
健康保険、厚生年金保険資格取得届又は脱退届 ・新たに外国人を雇い入れたとき
・外国人が離職したとき

所属機関

年金事務所

事由が生じた日から5日以内

適切な雇用管理

事業主が遵守すべき法令や、務めるべき雇用管理の内容などを盛り込んだ「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」が法律により定められています。

この指針に沿って、職場環境の改善や再就職の支援に取り組む必要があります。

主な罰則

「不法就労助長罪」(入管法73条の2)

  • 事業主が不法就労をさせたり、不法就労をあっせんした者は3年以下の懲役・300万円以下の罰金となります。事業主が不法就労にあたることを知らなかった場合でも、そのことに過失がない場合を除き処罰を免れません。事業主は、在留資格上、従事することが認められるものであることを確認しなければなりません。
  • 包括的資格外活動の週28時間制限は、どの曜日から起算してもこれを満たし、かつ、すべての就労先での合計就労時間が制限時間以内でなければなりません。
  • 「留学」にあっては、卒業、退学又は除籍等により教育機関に在籍しなくなった場合は、在留期限が残っていても資格外活動ができなくなることに注意が必要です。

「資格外活動罪」(入管法70条Ⅰの4、73条)

  • 資格外活動許可を受けずに、違法に「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」を「専ら行ったと明らかに認められる者」は3年以下の懲役・300万円以下の罰金、それ以外の者は1年以下の懲役・200万円以下の罰金、さらに在留資格取消の対象となります。

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<この記事の執筆者>

 きたむら行政書士事務所
 行政書士 北村 重男

 出入国在留管理局申請取次資格者

  

  

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