就労ビザの1つである在留資格「技能」は、熟練技能労働者を外国から受け入れるために設けられた在留資格で、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動が該当します。
代表的なものに、外国料理の調理やソムリエ等があります。
「技能」ビザの概要
在留期間 | 5年、3年、1年または3か月 | |
手数料 | 認定証明書 | 無料 |
変更 | 4000円 | |
更新 | 4000円 | |
標準処理期間 | 認定証明書 | 1か月~3か月 |
変更 | 2週間~1か月 | |
更新 | 2週間~1か月 |
「技能」ビザの許可要件
外国人を新たに呼び寄せる場合の許可要件は、下記の2つです。
(1)在留資格該当性
(2)上陸許可基準適合性
在留資格の変更・更新の場合は、これらに加えて
(3)変更・更新を適当と認めるに足りる相当の理由があること
が必要になります。
在留資格該当性
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動。
「産業上の特殊な分野」とは、次の第1号~第9号に該当する分野を言います。
- 第1号 調理師
- 第2号 建築技術者
- 第3号 外国特有製品の製造・修理
- 第4号 宝石・貴金属・毛皮加工
- 第5号 動物の調教
- 第6号 石油・地熱等掘削調査
- 第7号 航空機操縦士
- 第8号 スポーツ指導者
- 第9号 ワインの鑑定等
「熟練した技能を要する」とは、個人が自己の経験の集積によって有することとなった熟練の域にある技能を必要とすることを意味します。
解説
- 「技能」の在留資格に該当する活動は、特別な技能、判断等を必要としない機械的な作業である単純労働とは区別されます。
- 「技人国」と「技能」の区別は、「技人国」は学術上の理論を実際に応用して処理する能力をいい、「技能」は個人が自己の経験の集積によって有している能力をいいます。
- 「公私の機関との契約に基づいて」との文言から、自らが経営主体となることはできません。例えば、「技能(調理師)」の在留資格で調理業務に長く従事してきた外国人コックが、自ら店舗を持ち経営する場合は、在留資格は「経営・管理」に変更が必要になります。オーナーシェフとしての現場での調理活動は非常に制限的に解されており、現場業務を遂行する人材を他に確保したほうが良いです。
- 事務所や店舗の賃貸借契約書の借主名義や営業許可証の名義が「技能」の在留資格者となっている場合は不許可となる場合があるので注意が必要です。
上陸許可基準適合性
ここでは、第1号調理師の上陸基準について解説します。
- 料理の調理又は食品の製造に係る技能で、外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者で、次のいずれかに該当するもの。
(ア) 当該技術について10年以上の実務経験を有する者
(イ) タイ料理で、5年以上の実務経験があり、タイ王国とのEPA連携の適用を受ける者 - 上記に該当し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬を受けること。
解説
- 対象には、中国料理、フランス料理、インド料理等の調理師や、点心、パン、デザートの食品を製造する調理師やパティシエ等が該当します。日本料理や居酒屋は該当しません。
- 「10年以上の実務経験」には、外国の教育機関において、当該料理の調理又は食品の製造にかかる科目を専攻した期間を含みます。
- 「10年以上の実務経験」の証明には、在職先の住所、電話番号、在職期間等が明記された在職証明書(レターヘッド付きが良い)が必要となります。
- 中国の場合は、戸口簿や職業資格証明書等により職業が厳格に確認されます。職業として「厨師」「烹調師」「麺点師」等の調理師としての記載が必要です。
- 実務的には、本格的な料理を安定的にかつ継続的に提供することが求められます。店舗の外観・規模、メニューの内容、コース料理の有無、インド・パキスタン料理ではタンドールの有無等が判断材料となり図面・写真等を添付して申請します。
変更・更新を適当と認めるに足りる相当の理由があること
法務大臣は、外国人が提出した文書により、在留資格の変更・更新を適当と認めるに足りる「相当の理由」があるときに限り許可することができ、判断にあたっては下記の事項等を総合的に考慮して判断します。
- (ア)現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと。
- (イ)素行が不良でないこと。(法令に違反して懲役や罰金刑に処せられていないこと等)
- (ウ)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。
- (エ)雇用・労働条件が適正であること。
- (オ)納税義務を履行していること。(所得税、住民税、健康保険、年金)
- (カ)入管法に定める届出等の義務を履行していること。
解説
- (エ)については、勤務先の事業の適法性、安定性、継続性、業務内容、必要性、業務量、採用経緯、今後の計画または見通し、各信憑性が総合的に審査されます。
- 申請人の収入が、住民税の課税証明書、納税証明書等より契約時の金額であり、かつ日本人と同等以上であることが確認されます。
「技能」ビザの申請に必要な書類
下記の入管のホームページに申請に必要な提出書類が記載されています。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/skilledlabor.html
ただし、これらは最低限必要な資料となります。個々の事案に応じて理由書や追加資料を提出することが必要です。