この記事では、「日本人の配偶者等」ビザを持って日本に住んでいる外国人が、永住者ビザを取得したい場合について、永住権を取得するための条件や必要書類、重要なポイントについて解説します。
「永住者の配偶者等」ビザから永住申請は、こちらをご覧ください。
「日本人の配偶者等」ビザとは
「日本人の配偶者等」ビザとは、正式には在留資格「日本人の配偶者等」です。結婚ビザ、配偶者ビザ、日配ビザと呼ばれることもあります。
日本人の配偶者もしくは特別養子または日本人の子として出生した者が該当します。
「日本人の配偶者等」ビザには就労制限がありませんが、日本人の配偶者は配偶者(日本人)との死別や離婚により在留資格を失ってしまうため、より身分が安定する永住権の取得を希望されるケースも多くあります。
「日本人の配偶者等」ビザから永住権取得のための条件
① 在留年数について
② 最長の在留期間を持っていること
③ 年収について
④ 素行が善良であること(刑罰、交通違反)
⑤ 公的義務(税金、年金、健康保険)について
⑥ 身元保証人がいること
①在留年数について
永住申請をするには、原則として引き続き10年以上日本に在留し、このうち就労資格又は居住資格をもって5年以上日本に在留していることが必要です。
しかし、「日本人の配偶者等」ビザから永住申請をするときは、下記の条件を満たせばこの要件を満たします。
「日本人の配偶者等」ビザをもつ配偶者の場合
- 実態を伴った婚姻が3年以上経過し、かつ1年以上引き続き日本に在留していること。
実態を伴った婚姻が必要で、別居している場合は合理的な理由がない限り認められません。
「日本人の配偶者等」ビザをもつ子の場合
- 1年以上引き続き日本に在留していること。
いずれも一度の渡航で3か月以上、もしくは1年間に180日以上国外に滞在していないことが必要です。いったん途切れると合理的な理由がない場合、在留期間がリセットされます。
②最長の在留期間を持っていること
「日本人の配偶者等」ビザの在留期間は6月、1年、3年、5年がありますが、当面の間、在留期間「3年」以上を有する場合は、「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。
③年収について
「日本人の配偶者等」ビザの場合、年収は世帯全体の年収で審査されます。つまり申請人と配偶者である日本人の年収を合算することができます。公共の負担になってはいけないので、生活保護を受けていないことが必要です。
年収については、公表されていませんが一つの目安として300万円以上あり、さらに扶養家族1名あたりプラス60~80万円程度必要といわれています。確認対象期間は、申請時の直近3年間です。
転職については、キャリアアップにより年収が増える場合は問題ありませんが、収入が減った場合は、安定した生活とはまだいえないと判断される恐れがあるため、最低でも1年以上経過した後、永住申請することをお勧めします。
申請人だけでなく世帯単位で見た場合、安定した生活を続けることができると認められる場合これに適合するものとして扱われることがあります。また収入だけでなく、預貯金や不動産などの資産も考慮されます。
④素行が善良であること(刑罰、交通違反)
「日本人の配偶者等」ビザから永住申請の場合、法律上の文言では素行善良要件は要件にならないとされていますが、実務的には下記の違反行為がないことが必要です。
日本国の法令に違反して、懲役・禁固又は罰金に処されたことがないことが必要となっています。処罰されたことがある方は、処罰後に一定期間が無事に経過すれば許可になる可能性があります。一定期間とは、懲役と禁固の場合は刑務所から出所してから10年を経過(執行猶予の場合は、猶予期間が満了してから5年経過)することです。罰金・拘留・科料の場合は支払い終えてから5年が経過することで、日本国の法令に違反して処罰されたものとしては取り扱われません。
軽微な違反でも繰り返し行っている者は永住許可されません。例えば駐車違反や一時停止違反などを一般的には5回程度以上行っている場合が該当します。飲酒運転や無免許運転の場合は軽微な違反ではなく前項に該当します。
⑤公的義務(税金、年金、健康保険)をはたしていること
住民税
日本人の配偶者の場合は直近3年間(日本人の子の場合は直近1年間)において、住民税の未納や延納がないことの証明が必要です。
特に会社の給与から天引きされていない期間がある場合は、納付期限を守って支払いをしたことを証明するために、領収書を保管しておくことや、銀行口座からの自動引き落としの場合は、銀行通帳の記帳を忘れずに行うことが重要です。
年金
日本人の配偶者の場合は直近2年間(日本人の子の場合は直近1年間)において、公的年金(国民年金や厚生年金)の加入と未納や延納がないことの証明が必要です。国民年金の場合は領収書も保管しておくことが必要です。
健康保険
日本人の配偶者の場合は直近2年間(日本人の子の場合は直近1年間)において、健康保険(国民健康保険や会社の健康保険)の加入と未納や延納がないことの証明が必要です。国民健康保険の場合は納付証明書と領収書の保管が必要です。
国税(納税証明書(その3))
源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税および復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税に関する納付証明書(その3)の提出が必要です。住所地を管轄する税務署で発行されます。
確認対象期間に税や保険料の未納や延納があった場合は追納しても認められず、不適合となります。確認対象期間を過ぎた後、申請することとなります。
⑥身元保証人がいること
永住許可申請をする場合は、必ず「身元保証人」を用意しなければなりません。通常は配偶者または父である日本人が身元保証人となります。外国人がなる場合は「永住者」の方で、安定した収入があり、納税をきちんとしている方でなければいけません。身元保証人の年収の目安として、概ね300万円以上あるとよいです。
身元保証人の保証の内容は滞在費・帰国費用・法令遵守であり、連帯保証人とは違い、基本的に経済的な賠償は含まれておりません。入管法上の身元保証人とは道義的責任であり、法律的には責任は負いません。
「日本人の配偶者等」ビザから永住申請に必要な書類リスト
下記に永住申請に必要な書類リストを記載します。
ただし、ここに列挙する書類は一般的なもので、個々の状況に応じて提出すべき書類は異なります。
- 申請書
- 写真(縦4cm×横3cm)
- 申請理由書
- 履歴書
- 在職証明書
- 源泉徴収票
- 給与証明書
- 貯金通帳のコピー
- 自宅の賃貸契約書のコピー
- 不動産を所有している場合は登記事項証明書
- その他資産を証明する資料
- スナップ写真(自宅、家族)
- 住民票
- 身分関係を証明する資料(戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書など)
- 申請人の住民税の課税及び納税証明書(配偶者3年分、子1年分)
- ねんきん定期便またはねんきんネットの「各月の年金記録」印刷画面
- 国民年金保険料領収書(配偶者2年分、子1年分)(加入期間がある場合)
- 健康保険証の写し
- 国民健康保険料納付証明書(配偶者2年分、子1年分)(加入期間がある場合)
- 国民健康保険料領収書(配偶者2年分、子1年分)(加入期間がある場合)
- 納税証明書(その3)
- 身元保証書
- 身元保証人の住民票
- 身元保証人の住民税の課税及び納税証明書(1年間)
- 了解書
※本国資料はすべて日本語訳が必要です。
「日本人の配偶者等」ビザから永住申請で注意すべき事項
永住許可申請は、許可率が低く年々審査が厳しくなっており、他の在留資格申請と比べて難易度が高く、かつ必要書類が多いため申請準備に時間がかかります。
不許可になる主な理由は、要件に適合していない場合や、提出書類や理由書の内容が不十分で疑義を持たれてしまった場合などがあり、はじめから専門知識がある専門家に任せた方が許可を得やすいといえるでしょう。
また、永住許可申請は審査期間が長いため、審査中に現在の在留資格が在留期限を迎えることがしばしばあります。この場合は忘れずに在留期間更新許可申請をしましょう。
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<この記事の執筆者>
きたむら行政書士事務所
行政書士 北村 重男
出入国在留管理局申請取次資格者