この記事では、就労ビザを持って日本に住んでいる外国人が、永住者ビザを取得したい場合について、永住権を取得するための条件や必要書類、重要なポイントについて解説します。
就労ビザとは
就労ビザとは、次の19種類のいずれかの在留資格をいいます。
永住申請にあたっては、現在も在留資格に見合った活動を継続していることが審査されます。
- 外交
- 公用
- 教授
- 芸術
- 宗教
- 報道
- 高度専門職 (※1)
- 経営・管理 (※1)
- 法律・会計業務
- 医療
- 研究
- 教育
- 技術・人文知識・国際業務
- 企業内転勤
- 介護
- 興業
- 技能
- 特定技能(1号、2号) (※2)
- 技能実習(1号、2号、3号) (※2)
※1 経営管理、高度専門職(高度人材)については、別のページで詳細を解説します。
※2 特定技能と技能実習については、就労期間の取扱いが異なるため注意が必要です。
就労ビザから永住権取得のための条件
① 必要な在留年数、就労年数を満たしていること
② 最長の在留期間を持っていること
③ 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有していること
④ 素行が善良であること(刑罰、交通違反)
⑤ 公的義務(税金、年金、健康保険)をはたしていること
⑥ 身元保証人がいること
①必要な在留年数、就労年数を満たしていること
就労ビザから永住申請をするときは、引き続き10年以上日本に在留し、このうち就労資格又は居住資格をもって5年以上日本に在留していることが必要です。
引き続き10年以上日本に在留とは、在留資格が途切れることなく在留を続けることをいいます。一度の渡航で3か月以上、もしくは1年間に180日以上国外に滞在していないことが必要です。いったん途切れると合理的な理由がない限り在留期間がリセットされます。
就労資格又は居住資格をもって5年以上とは、永住申請時から直近5年間継続して就労資格または居住資格(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)を持つ必要があります。この間に転職は問題ありませんが、転職活動で無職の期間が長い場合は在留資格に見合った活動をしていないため要件を満たさないと判断されることがあります。
留学生が卒業後に就労ビザを取得して引き続き日本に在留した場合は、留学の期間は在留年数に含まれます。例えば、日本語学校2年+専門学校2年+技人国ビザ6年の場合は要件を満たします。
技能実習(1号、2号、3号)、特定技能(1号)は在留年数に含まれますが、就労年数には含まれません。特定技能(2号)は在留年数および就労年数のいずれにも含まれます。
例えば、引き続き技能実習3年+特定技能(1号)3年+特定技能(2号)5年の場合は要件を満たします。
②最長の在留期間を持っていること
現在、有している在留資格の在留期間が、最長の在留期間であることが必要です。
ただし当面の間、在留期間「3年」を有する場合は、「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。
③独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有していること
日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その者の職業又はその者の有する資産等からみて将来において安定した生活が見込まれることが必要です。
公共の負担になってはいけないので、生活保護を受けていないことが必要です。
年収については、公表されていませんが一つの目安として300万円以上あり、さらに扶養家族1名あたりプラス60~80万円程度必要といわれています。確認対象期間は申請時の直近5年間です。
転職については、キャリアアップにより年収が増える場合は問題ありませんが、収入が減った場合は、安定した生活とはまだいえないと判断される恐れがあるため、最低でも1年以上経過した後、永住申請することをお勧めします。
日本人・永住者・特別永住者の配偶者またはその実子である場合は、独立生計要件は免除されますが、扶養者の年収が上記を満たすことが必要です。
申請人だけでなく世帯単位で見た場合、安定した生活を続けることができると認められる場合これに適合するものとして扱われることがあります。また収入だけでなく、預貯金や不動産などの資産も考慮されます。
④素行が善良であること(刑罰、交通違反)
日本国の法令に違反して、懲役・禁固又は罰金に処されたことがないことが必要となっています。処罰されたことがある方は、処罰後に一定期間が無事に経過すれば許可になる可能性があります。一定期間とは、懲役と禁固の場合は刑務所から出所してから10年を経過(執行猶予の場合は、猶予期間が満了してから5年経過)することです。罰金・拘留・科料の場合は支払い終えてから5年が経過することで、日本国の法令に違反して処罰されたものとしては取り扱われません。
軽微な違反でも繰り返し行っている者は永住許可されません。例えば駐車違反や一時停止違反などを一般的には5回程度以上行っている場合が該当します。飲酒運転や無免許運転の場合は軽微な違反ではなく前項に該当します。
配偶者や子が家族滞在ビザや留学ビザで資格外活動許可を得てアルバイトをしている場合で、週28時間を超えて働いていたときは不許可となります。この場合は3年以上経過が必要といわれています。
⑤公的義務(税金、年金、健康保険)をはたしていること
住民税
直近5年間において、住民税の未納や延納がないことの証明が必要です。
特に会社の給与から天引きされていない期間がある場合は、納付期限を守って支払いをしたことを証明するために、領収書を保管しておくことや、銀行口座からの自動引き落としの場合は、銀行通帳の記帳を忘れずに行うことが重要です。
年金
直近2年間において、公的年金(国民年金や厚生年金)の加入と未納や延納がないことの証明が必要です。国民年金の場合は領収書も保管しておくことが必要です。
健康保険
直近2年間において、健康保険(国民健康保険や会社の健康保険)の加入と未納や延納がないことの証明が必要です。国民健康保険の場合は納付証明書と領収書の保管が必要です。
国税(納税証明書(その3))
源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税および復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税に関する納付証明書(その3)の提出が必要です。住所地を管轄する税務署で発行されます。
確認対象期間に税や保険料の未納や延納があった場合は追納しても認められず、不適合となります。確認対象期間を過ぎた後、申請することとなります。
⑥身元保証人がいること
永住許可申請をする場合は、必ず「身元保証人」を用意しなければなりません。永住申請において身元保証人になれる人は、日本人か、外国人の場合は「永住者」の方で、安定した収入があり、納税をきちんとしている方でなければいけません。身元保証人の年収の目安として、概ね300万円以上あるとよいです。
身元保証人の保証の内容は滞在費・帰国費用・法令遵守であり、連帯保証人とは違い、基本的に経済的な賠償は含まれておりません。入管法上の身元保証人とは道義的責任であり、法律的には責任は負いません。
就労ビザから永住申請に必要な書類リスト
下記に永住申請に必要な書類リストを記載します。
ただし、ここに列挙する書類は一般的なもので、個々の状況に応じて提出すべき書類は異なります。
- 申請書
- 写真(縦4cm×横3cm)
- 申請理由書
- 履歴書
- 在職証明書
- 源泉徴収票
- 給与証明書
- 貯金通帳のコピー
- 自宅の賃貸契約書のコピー
- 不動産を所有している場合は登記事項証明書
- その他資産を証明する資料
- スナップ写真(自宅、家族)
- 卒業証書のコピー
- 住民票
- 身分関係を証明する資料(出生証明書、婚姻証明書など)
- 家族の身分関係を証明する資料(家族滞在の方がいる場合)
- 申請人の住民税の課税及び納税証明書(5年分)
- ねんきん定期便またはねんきんネットの「各月の年金記録」印刷画面
- 国民年金保険料領収書(2年分)(加入期間がある場合)
- 健康保険証の写し
- 国民健康保険料領収書(2年分)(加入期間がある場合)
- 納税証明書(その3)
- 身元保証書
- 身元保証人の住民票
- 身元保証人の住民税の課税及び納税証明書(1年間)
- 了解書
※本国資料はすべて日本語訳が必要です。
就労ビザから永住申請で注意すべき事項
永住許可申請は、許可率が低く年々審査が厳しくなっており、他の在留資格申請と比べて難易度が高く、かつ必要書類が多いため申請準備に時間がかかります。
不許可になる主な理由は、要件に適合していない場合や、提出書類や理由書の内容が不十分で疑義を持たれてしまった場合などがあり、はじめから専門知識がある専門家に任せた方がスムーズに許可を得やすいといえるでしょう。
永住許可申請は審査期間が長いため、審査中に現在の在留資格が在留期限を迎えることがしばしばあります。この場合は忘れずに在留期間更新許可申請をしましょう。
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<この記事の執筆者>
きたむら行政書士事務所
行政書士 北村 重男
出入国在留管理局申請取次資格者